
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:12:02.05 ID:/Tf+9zr+0
タラヲ「この中の誰かが殺人鬼なんですよ!僕、自分の部屋に戻るですぅ!!」
その夜。とても静かな夜。
時計の示す時刻は、既に10時を過ぎていた。
普段の彼なら、もう深い眠りについている時間。
静寂を切り裂くように、タラヲの部屋の扉がノックされた。
トントントン
タラヲ「だ、誰ですか?ま、ママ?」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:19:10.36 ID:/Tf+9zr+0
暫く待ったが返事は返ってこない。
恐怖との対峙。薄い扉一枚挟んだ向こう側に殺人鬼がいる。
タラヲは口内に溜まった唾を飲む。
そしてもう一度その人物に問いかけた。
タラヲ「だ、誰ですか?」
沈黙。静かな時間が流れる。
タラヲは早くなる心臓の鼓動さえ五月蝿いと感じた。
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:26:49.64 ID:/Tf+9zr+0
ガチャ
不可思議な音が部屋に響き渡る。
その音は日常の中でよく聞く、ありふれた音。
しかし、この状況においては不可思議としか表現できない。
タラヲは自分の耳を疑った。
開くはずのない部屋の鍵が、今、開錠された。
ギギギという音を立て、彼と殺人鬼を隔てていた扉が開く。
唯一の防護壁。それが今崩れた。
タラヲ「あ、あああ……。お前は……」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:32:23.55 ID:/Tf+9zr+0
無防備。助けを呼ぶ声すら出てこない。
ゆっくりと彼に歩み寄る殺人鬼。
窓から差す月の明かりが、闇にその人物を浮かび上がらせた。
タラヲをよく知るその人物。
右手で何かが月光を反射した。
何だろう、タラヲはそれを睨む。いや、見なくても答えは知っていたのかもしれない。
銀色に光るナイフ。
タラヲ「や、やめるですぅ……!なぜ、お前が僕を……」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:36:55.44 ID:/Tf+9zr+0
当然のように返答はない。
その人物は黙って、右手を振り上げた。
タラヲもその動きを目で追う。自分がこの後どうなるかは予測できていた。
ずっと閉じたままの口元が緩む。黄ばんだ歯が見えた。
笑っている。無抵抗の獲物を前にして笑っているのだ。
タラヲは逃げようとも叫ぼうともしない。否、できない。
得体の知れない物に行動を制限されている感覚。
今出来るのは、どうして自分が殺されるのか、その理由を考えることだけだった。
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:45:48.65 ID:/Tf+9zr+0
殺人鬼は右手を振り下ろすだけ。それでタラヲの短い人生は幕を下ろす。
だが、その最後のアクションをまだ実行しようとはしない。
躊躇している?タラヲを殺すことに?
そうじゃないことはタラヲ自身も分かっていた。
楽しんでいるのだ、タラヲが圧倒的恐怖に押しつぶされている様を。
タラヲ「ど、どうして僕なんですかぁ?
どうせ殺すなら、出来損ないのカツオ兄ちゃんやイクラちゃんを……」
殺人鬼が横に首を振った。初めての反応。
違う、誰でもいいわけじゃない、お前だから殺すんだ。
不意にタラヲの脳裏に蘇る光景。あの夏の日。雨上がりの空。
タラヲ「ま、まさか……!あのときの?ち、違うですぅ!
あれは僕のせいじゃない!あれはぼ」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 02:52:05.09 ID:/Tf+9zr+0
彼の生涯最後の台詞を言い終える前に、右手のナイフが咽喉元を切り裂いた。
血が吹き出る。
両手で必死に押さえるが止まるはずもない。
そのまま、前方に倒れこむ。
何かを言おうと、パクパクと口を動かす。助けてくれ、と言いたいのだろうか。
殺人鬼はそれを見て、再び唇の端を吊り上げる。
すでに虚ろになったタラヲを目はそれを捉えた。
意識がなくなる直前、次は頭部に何かが入り込む感覚がした。
その痛みを感じる間もなくタラヲは永久の眠りについた。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:26:43.79 ID:/Tf+9zr+0
翌朝、寝室からタラヲのバラバラ死体が発見された。
遺体は頭部、胴体部、両腕、両足の六つに切り分けられていた。
床一面に赤黒い染みが広がっている。
鼻を突く血と肉の匂い。
そして正面の壁に赤い、おそらくタラヲの血で書かれた文字をサザエが発見する。
『REMEMBER SUMMER DAY』
カツオだけがその意味を理解していた。
ああ、もしかしたら次に殺されるのは……
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:31:51.16 ID:/Tf+9zr+0
カツオ「中島、人ってどうして人を殺せるんだ?」
中島「仕方ないよ、タラちゃんは殺されるだけのことはしたんだ」
カツオ「それでも僕にとってタラちゃんは大切な家族だった……!」
カツオは天を仰ぐ。溜まった涙を零さないために。
ぼやけた視界に青空が飛び込んできた。雲ひとつない、どこまでも続く空。
手の甲で、瞼の裏に残った雫を取り除くと、無理に笑顔を作る。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:33:54.86 ID:/Tf+9zr+0
カツオ「でも、いつまでも泣いてばかりじゃ、タラちゃんも天国にいけないよ」
中島「……なんだよ、天国って。あいつが天国にいけるわけないだろ!」
カツオ「黙れっ!お前にタラちゃんの何が分かるんだッ!!」
カツオの拳が中島の頬にぶつかる。
予想外の衝撃に中島の身体は後ろに吹き飛んだ。
殴られた方とは逆の頬に冷たい砂の感触がする。
鉄の味がした。口内のどこかが切れたのだろう。
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:38:51.37 ID:/Tf+9zr+0
カツオ「タラちゃんは悪くないッ!悪くないッ!!」
中島「いつまで、そうやって現実から目を背けるつもりなんだ、磯野」
カツオ「どういう意味だ……?」
中島「書いてあったんだろ、あの夏の日を忘れるなって!それって……」
カツオ「五月蝿いッ!五月蝿いッ!五月蝿いッ!」
中島「お前、次は自分の番だと思ってるんだろ?自分も天国にいけると思ってんのか!」
咆哮。カツオの叫び声が周囲に響く。
誰もいない。彼の苦しみを理解できる者は誰一人。
堪えたはずの涙が零れ落ちた。
地面に何度も頭を叩きつける。
中島はただそれを黙ってみていた。
親友の磯野カツオもまた、それだけのことをしたのだから。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:43:31.08 ID:/Tf+9zr+0
一通り泣き終え、感情の高まりが静まった後、二人はバラバラに帰っていった。
カツオは家戻る気にはなれず、一人公園のベンチに座る。
数時間。頭上の色が青から橙に変化し終わっていた。
どこからか音楽が聞こえてくる。
曲名は確か『遠き山に日は落ちて』
先程までいた子供連れの母親たちもいない。
辺りはシンと静まり返っていた。人影も少ない。
カツオは急に不安になる。この状況は危ない。
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:51:20.12 ID:/Tf+9zr+0
カツオ「早く、家に帰ろう」
独り言を漏らし、ベンチから立ち上がる。
長い間同じ体勢でいたせいか体が痛い。
ガサガサ
背後で何かが揺れる音がした。
反射的に動きを止める。嫌な汗が全身から噴出す。
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 03:53:45.24 ID:/Tf+9zr+0
振り向くべきか?いや、それよりすぐにここを離れるべきだ。
呼吸が荒くなる。次にすべき事が分かっているのに、それを行動に移せない。
小刻みに震える。外気はそれほど寒くないのに。
一度深く深呼吸して、ゆっくりと視線を背後に送る。
ガサガサ。また何かが動いた。
にゃー
カツオ「な、なんだよ、猫か。驚かすなよ……」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:00:32.29 ID:/Tf+9zr+0
見たことのない黒猫、首輪もしていない。野良猫だろうか。
何かを訴えるように必死で鳴いている。
カツオ「どうした?お腹すいてるのか?」
夕日を背に浴びて、カツオの影がその猫を更に黒く演出する。
その両目がギラリ怪しく光った。
抱きしめようとした瞬間、黒猫は逃げていった。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:06:21.00 ID:/Tf+9zr+0
カツオ「何だよ、お前も僕が嫌いなのか……」
暫く猫が消えていった植え込みを見つめていた。
そして気づく。何かが背後で動いている。
カツオの影に覆いかぶさるような、何者かの影。
ハッとして振り返る。だが遅かった。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:09:33.91 ID:/Tf+9zr+0
頭蓋骨を通して鼓膜に直接届く嫌な音。直後に頭部に走る鈍い痛み。
視界がグルグル回る。
カツオは仰向けに倒れた。オレンジの空を遮り、その人物が立っている。
カツオ「お、お前が、殺人鬼、の正体、なのか……」
ベキッ
何かが砕ける音が木霊する。
しかし、それも『遠き山に日は落ちて』にかき消された。
幾度となく頭部に振り下ろされる何かを感じながら、カツオの意識は薄れていった。
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:40:46.58 ID:/Tf+9zr+0
サザエ「父さん、カツオがまだ帰ってこないの……」
波平は居間にかけられた時計を見る。もう6時半を過ぎていた。
普段ならとうに帰宅している時間だ。それもあんな事件があったばかりなのに。
波平「ワシとマスオ君で探してこよう。サザエと母さんは家にいてくれ」
玄関を開ける。
昼間の暑さが嘘のように、心地よい風が吹き込んできた。
電信柱にとまったカラスが鳴いている。
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:43:59.62 ID:/Tf+9zr+0
マスオ「じゃあ行ってくるよ、サザエ」
サザエ「気をつけてね、あなた」
表の通りをマスオは右へ、波平は左へと進んだ。
状況が状況だけに嫌な想像をしてしまう。
もしかしたら、既にカツオは……。
自ら脳内で生み出した情景を必死で振り払う。
波平「大丈夫だ、カツオはそう簡単に死ぬような男じゃない」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:48:28.37 ID:/Tf+9zr+0
中島家のチャイムを鳴らす。
暫くして、カツオの友人の中島が出てきた。
彼なら何か知っているかもしれない、波平はそう考えた。
中島「2時くらいまで一緒にいたんですけど、その後はどこへ行ったか……」
波平「そうか。ありがとう、中島くん」
その後、何人かの友人宅を訪ねるが、有力な手がかりは得られない。
途方に暮れる。
空は段々とオレンジから黒へと変わっていく。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:53:17.72 ID:/Tf+9zr+0
走り回ってせいか、下着の中にジワっと汗が滲んでいる。
決して若くはない。ここ最近、体力の低下が著しい。
一度、公園の前にある公衆電話から家に電話を掛けた。
フネが出る。
やはりカツオはまだ帰ってきていない。
先程の情景がより鮮明になって再生される。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:55:38.37 ID:/Tf+9zr+0
フネ「あなた、もしかしたら、あの子はもう……」
波平「ばっかもーん!そんなはず無いだろう!馬鹿な事を言うなッ!!」
フネの言葉を最後まで聞くのが怖くなり、受話器を叩きつける。
乱れた呼吸を整えてから、電話ボックスから出た。
公園内に入る。
時計を見て、カツオを探し始めてから既に一時間以上経っていることを知った。
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 04:59:53.37 ID:/Tf+9zr+0
何かが公園の奥で動いた。
こんな時間に誰かいるのか?周囲を見渡しても、波平以外誰もいない。
波平「もしかして、カツオか……?」
街頭も無いその一画は既に闇そのものだった。
しかし、確実に何かがいる。
波平がジッと見つめる先でまた何かが動いた。
駆け寄りたいはずなのに、なぜか彼の足はゆっくりとしか進まない。
足音を殺すように、気配を殺すように、忍び足で近づく。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 05:04:19.18 ID:/Tf+9zr+0
波平「おい、カツオなのか?」
その言葉を聴いて初めて波平の存在に気づいたようだ。
それはピタッと動きを止めた。
返事を待たず、波平は闇の中へと入っていく。
植え込みを掻き分け進むと、ちょっとした空間に出た。
まだ闇に目の馴染んでいない波平には何も見えない。
恐る恐る足を前に出す。
数歩進んだ後、左足の下に何かを踏みつけた。
柔らかい。何だろう?
歳のせいか、年老いた目は未だ何も捉えない。
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 05:14:38.35 ID:/Tf+9zr+0
波平はしゃがみ込んで“それ”に触れてみた。
冷たく、ぷにぷにしていて、奥は固い。
どうにか目が慣れてきた。少しずつ“それ”が何か分かってきた。
人形?先程の人がここに捨てていったのか?
そういえば、と思い出す。一体誰がここにいたのだろうか。
彼は脳内をその疑問で埋め尽くす。
その理由は簡単だ。彼は気づいてしまったからだ。
いま自分が触れているものの正体、そして先程の影の正体に。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 05:22:21.89 ID:/Tf+9zr+0
誰かが人形を捨てていった?違うことは分かっている。
だが、消極的にしか現実を捉えられない。
もちろん、波平の聴覚は迫り来る何者かの足音を感知していた。
しかし、彼はそれすら認めようとしなかった。
グシャ
遅れること数秒、何らかの刺激が神経を通して波平の脳に伝えられた。
生暖かい何かが頭から顔の左半分を流れていく。
そして左半分の視界が消えた。
しかしながら、現実を認めない波平。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 05:23:52.10 ID:/Tf+9zr+0
それから幾度となくあの音が響いた。
グシャグシャグシャ
あれは一体誰だったんだろう、この人形は何なのだろう。
それが彼が最期まで持ち続けた疑問だった。
彼の意識が無くなり、その体が人形らしき物の上に倒れる。
グシャグシャグシャ
しばらくの間、公園の一画、既に闇に侵食された空間に
その気味の悪い音が鳴り続いた。
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 11:53:31.06 ID:/Tf+9zr+0
茹だる様な暑い夏の日。蝉が五月蝿いほど大きな声で鳴いていた。
風はあまり無い。それでも頭上の白い雲は形を変える。
温められたアスファルトの上を一人の少女が歩いていた。
照りつける日差しを遮る白い帽子。
右手にはバッグを持ち、左手で煽ぐ。
それでも、額に滲む汗が一筋、頬を流れた。
ポケットから紙切れを取り出す。住所が書かれていた。
表札と聞いていた名前を照合させる。
うん、この家で間違いない。
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 11:56:14.10 ID:/Tf+9zr+0
少女が父に頼まれた用事を済ませ、再び熱せられた外気の中に飛び込む。
彼女は空を見上げた。雲行きが怪しい。
そう思った刹那、鼻の頭に水滴が落ちた。
夕立。
まずい、急いで帰らないと。
空になったバッグを頭に載せ、彼女は駆け出した。
一歩踏み込むごとに、肌に当たる雨粒が増えていく。
遠くで雷が鳴った。
ポツポツからザァザァへと擬音語が変わる。
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 11:58:21.33 ID:/Tf+9zr+0
見慣れた町まで帰ってきたが、自宅はまだ遠い。
次第に激しくなる夕立。
服が肌に纏わりついて、気持ち悪い。
角を右に折れると、よく知った家が目に入る。
そうだ、彼の家で雨宿りさせてもらおう。
更に足を速め、門を潜り抜け、チャイムを鳴らした。
彼が出てくる。そして少女はその家の奥へと姿を消した。
二年前の夏の日を記憶。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 12:00:27.90 ID:/Tf+9zr+0
窓に何かが当たる音で目が覚めた。
枕元に置かれた時計で時間を知る。午前1時。
中島は定まらない視界を矯正するため、時計の隣に置かれた眼鏡を手に取った。
中島「雨が降ってきたのか」
カーテンを開けて、窓の外に身を乗り出す。
夜空に、くっきりと天の川が見えた。
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 12:03:22.72 ID:/Tf+9zr+0
いつ以来だろうか、こんなに綺麗な星空を見たのは。
暫し、見惚れていた。が、思い出す。
雨粒以外の何が窓を叩いたのか。
左右を見渡すが、窓に当たりそうなものは何も無い。
瞬間、視界の下、何かが伸びてくる。
それが彼の口を強い力を持って塞ぐ。
咄嗟のことに、それが何者かの手であることを理解するまで数秒要した。
しかし、その僅かな時間も、その人物は待ってくれない。
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 12:05:51.43 ID:/Tf+9zr+0
叫び声をあげることは無駄だと判断した中島の両手が、口を塞ぐ誰かの手を引き離そうとしている。
彼の注意がそこに集中している隙に、頭上からギラリと光る物が振り下ろされた。
本能が危険を察知し、右腕を身代わりにした。
異物が差し込まれる。そして全身を巡る激痛。
まだ声は出せない。
全体重を後方に傾ける。前後左右、身体を振り続けた。
片手の握力ではさすがに支えきれず、中島はその人物の拘束を逃れた。
そこで、初めてその人物の顔を拝むことになる。
中島「はぁはぁ、やっぱり、あなたが犯人、だったんですね……」
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 12:07:15.69 ID:/Tf+9zr+0
殺人鬼は躊躇っている。
今叫ばれると誰かがやって来る。しかし、顔を見られてしまった。
逃げるか、追うか。
中島「でも、どうして僕まで……」
血の止まらない右の二の腕を抑え、中島はその人物に近づく。
殺人鬼にとって、それは予想外の行動だろう。
中島「……僕も、あなたと同じ思いでした、花沢さん」
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 12:09:01.98 ID:/Tf+9zr+0
殺人鬼が動きを止めた。
花沢父「……そうかい、もしかして君が……」
中島「……僕は、花沢さんが、花子が好きでした」
再び、中島の脳裏にあの夏の、雨上がりの午後の情景が浮かぶ。
それは彼が聞かされた話を元に作り出した想像の映像。
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:08:19.81 ID:/Tf+9zr+0
花沢花子が雨宿りのために、磯野家を訪れた日。
大人たちは揃って出かけたらしく、家にはタラヲとカツオの二人だけだった。
カツオは快く彼女を中へと招き入れた。
中学生になった花子は数年前とは比べ物にならないくらい綺麗になった。
頬の肉が落ち、黒髪が肩まで伸びる。少し上を向いた鼻もチャーミングに思えた
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:10:16.36 ID:/Tf+9zr+0
雨で濡れた服がピタリと付いて、体のラインが浮き出る。
思春期のカツオは、それだけ興奮した。
カツオは彼女が以前から自分に好意を抱いていることを理解していた。
親もいない。それならば、この場で。
いや、駄目だ。家の中には甥のタラヲがいる。
そんな妄想をしながら、脱衣所で彼女のためのタオルを取り、部屋へと戻る。
その時、すでに今回の惨劇の序章が始まっていた。
79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:11:19.69 ID:/Tf+9zr+0
タラヲ「花沢さん、すっかり女らしくなったですぅー。ちょっと味見させるですぅー」
花沢「ちょっと、タラちゃん、ふざけないで!」
タラヲ「ふざけてなんかいません。僕は本気ですよ。それ!」
ビリビリと音を立て、花沢の着ていたTシャツが破れていく。
露わになる濡れた肌を隠そうとする花沢の両腕を、タラヲが強引にこじ開けた。
タラヲ「ふふふ、中学生の割に、いい胸してるです」
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:13:09.99 ID:/Tf+9zr+0
花沢「や、やめて……!」
タラヲ「無理な相談です。僕はもう止まりませんですぅー」
花沢「どうしてこんな……」
タラヲ「どうして?そっちが誘ったんだろ?
親がいないことを知っていて、こんな格好で着やがって」
花沢「ち、違う!あたし、そんなつもりは……」
タラヲ「ギャーギャー五月蝿いんだよッ!」
タラヲは花沢の頬を殴りつける。
突然の衝撃に、言葉を失う。
赤く色づいた頬が、ジンジンと痛い。
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:15:27.32 ID:/Tf+9zr+0
花沢「……ケダモノ」
タラヲ「ふふふ、何ともでも言えばいいです。
どうせすぐに花沢さんもケダモノのようになるんですから」
そこにカツオが入ってきた。
驚愕と困惑。しかし、状況はすぐに飲み込めた。
彼自身も同じことを考えていたから。
助けを求める花沢。しかしその声はカツオの耳には届かない。
そして二人は順々に少女の身体に覆いかぶさった。
数日後、花沢花子は自室で首を吊った。
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:18:06.84 ID:/Tf+9zr+0
花沢父「この間、花子の部屋を整理していたら遺書が見つかった。
二年経ってやっと本当のことが分かった」
中島「遺書には何て書いてあったんですか」
花沢父「……カツオ君たちに、その、無理やり……」
中島「……分かりました。もうそれ以上言わなくて結構です」
花沢の手からナイフが落ちる。地面に当たって甲高い金属音が響いた。
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:19:12.68 ID:/Tf+9zr+0
彼女の自殺後、罪の重さに耐え切れなくなったカツオは全てを中島に話していた。
中島は真実を知っても何も出来なかった。
愛する人を死に追いやったのが、親友だったとは信じたくなかった。
声を押し殺して泣く花沢の姿を見たくない、目線を上と逸らす。
低い天井だ。
右腕の痛みも麻痺してきた。何も感じない。
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:20:22.99 ID:/Tf+9zr+0
花沢父「娘とは付き合っていたのかね」
中島「……いえ、正式には。でも中学に進学してから、
二人の気持ちが同じことは何となく分かりました」
花沢父「そうか。昔はカツオ君一筋だったのに」
中島「一度振られて吹っ切れたらしいです。彼女が言っていました」
眩暈がする。血を流しすぎたのだろう。
その後、花沢が何かを言っていたようだが、聞き取ることは出来なかった。
朦朧とする意識の中、花沢花子の声が聞こえた気がした。
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:21:27.44 ID:/Tf+9zr+0
次に彼が意識を取り戻したのは、病院のベッドの上。
家族が心配そうに見下ろしていた。
中島「そうか、僕は生きているのか……」
後日聞いた話によると、花沢の父親も首を吊ったらしい。
遺書はまだ見つかっていない。
彼の元へ警察が何度も訊ねてきたが、真実を話す気にはなれなかった。
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:23:27.71 ID:/Tf+9zr+0
退院後、花沢家の墓地に花を供えに行く。
何処からともなく、蝉の鳴き声が聞こえてきた。
中島「そうか、また夏がやって来たんだね……」
中島はそこにいるかも知れない彼女に向けて、そっと呟いた。
―了―
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:27:06.90 ID:HiJFwN/EO
乙おもしろかったー
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 13:58:16.47 ID:uGJ2FWJk0
乙
タラちゃんの鬼畜っぷりに吹いたわwww
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 15:03:20.97 ID:/vDs3wPcO
>>1乙。面白かったよー
文体も良かった
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吹いたw
タラヲ鬼畜w
タラヲ何歳だよこの時
てかタラちゃんこの時何歳だよww
てことはたらちゃん4~7歳
・・・ぇ?
氏んでるじゃねーかwwwww
しかしどうですかみなさん
このコメ欄の頭の悪さ
もう少し色々な本読んだ方が良いと思われ
どうみてもタラヲのせいです
冒頭でまだ誰も殺されてないのに
「この中に殺人者が・・・」となるんだ
しかも「この中」に犯人いないし
あー気になってしょうがない
サザエさんの家はふすまな件
世の中にはもっと面白いものであふれてるぞ?
文書はいいかどうかわからんが、ストーリーがただの殺人鬼の話なだけじゃん
オチないようなもんだろ
面白くもなんともない
一気に読んだー
おもしろかったー!
はいはい米欄米欄
ラノベぽいというか
つまり
タラヲ死ね
個人的に花沢花子が美人になったと言う補足に救われた気がする
いや、死んだんだけど、死ね
タラヲ死ねwww
よくこんなんのせたな
「ラストサマー」も入ってるしパクったもんの寄せ集めか。
まだいるんだね、「じゃあお前できんのかよ」とか言っちゃう人
まあこれよりマシな文章書ける人なんてそこら辺見渡しても珍しくも無いだろうけど
氏ね
サザエさんでやる意味はないな
嫌いじゃない感じ
しかしなぜ中島まで襲われたのか、書き手が真相の種明かしをしたい以上の筋が通ってない
文章力は保留としても、書きたいシーンだけバスバス適当に連ねて書いてるあたりが非常に残念
犯人隠してミステリ風味にするならちったぁストーリー構成に整合性持たせてくれw
文章下手だとか整合性がないとか、突っ込むの野暮じゃね?
スレタイでいきなりタラヲが死亡フラグなんだし、ただサザエさんで猟奇をやりたかっただけなんだろ。
俺は個人的に面白かった、乙
もっとシンプルに書けるように練習しろ。
評論家気取りの米に萎えたがな
浪平とマスオさんがカツオくんを探しに行ってるとき
実はまだ時系列的にはカツオくんは生きてて、それを探すフリをして殺しにいくマスオさんじゃなかったのか・・・
タラの年齢に無理があるとか、粗が目立つな。
もっと面白いオチがつくのかと思って読んだけど普通だった。
タラヲただの外道鬼畜レイプ魔じゃんwww
読み手は自分の技術を棚上げして肯定的・否定的どんな感想を述べてもいい
ちなみにこれが面白いと思うなら、SS宝庫のサザエSSみてみそ
文章は読みやすいのに大きいことで読みにくくなっているのが残念
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